楢﨑 瑞の日記
本当の強さ
先週末、取材で長崎国体に行ってきました。
各県を代表して出場した、様々な世代のトップランカーたちの戦いは、
さすが国体!と思わせるほどハイレベルなものでした。
今回私が取材したのは、
陸上・少年男子100mに出場した、周陽中学の宮本大輔選手。
100mで日本中学生記録(10秒56)を持つスプリンターです。
中学生の大会ではほぼ敵なしの宮本選手。
ただ今回の国体は、10秒47のベストタイムを持つ高校1年生、サニブラウン選手(東京)が出場していて、
宮本選手にとっては、「追われる立場」から「追う立場」の大会でした。
「とにかくいつも通りに走る。それだけです」
大会前に力強く話してくれた宮本選手。
結果は、準優勝。
大会新記録の10秒45で優勝したサニブラウン選手には、わずかに及びませんでした。
「自分の力が足りなかった。ただ悔しい。もっと強くなりたい。」
いつものように淡々と。しかし、悔しさを押し殺しながら、宮本選手は話してくれました。
アスリートにとって、
「自分の力が足りない」という言葉を発することは、どれほど悔しいことでしょうか。
世代トップの並み居る高校生たちに競り勝っての国体準優勝は、快挙と言っていいほど凄いことです。
それでも宮本選手は喜ぶことなく、
悔しさをじっとこらえながら、今の自分の力を冷静に見つめ、
「自分の力が足りない」と言ったのです。
テレビや新聞の報道で、宮本選手の「速さ」にばかり目が行きがちですが、
宮本大輔という選手の「本当の強さ」は、こうした精神的な強さだと、取材を通して感じました。
「今回はっきりした弱点を強化して、ジュニアオリンピックで優勝したい」
彼の目はもう、次の大会を見ています。
もっともっと速くなろうとしています。
その速さにおいて行かれないように、しっかりと追いかけねば。
取材者として、いちファンとして。
そんなことを思った、長崎国体取材でした。