楢﨑 瑞の日記

little by little

前回のコラムでお話しした、

周南市を拠点に活動するバドミントンチーム「ACT SAIKYO」のお話です。

2月15日の「Jチャンやまぐち」では、日本リーグ1部の最終戦の様子をお伝えしました。

同時にオンエアした企画が「もうひとつの最終戦」です。

 

今大会をもって引退する、皆川友依(みながわ・ゆい)選手が、

同期であり、今は選手を引退してマネージャーの安念幸恵(あんねん・さちえ)さんに

大会最終戦の後に感謝の手紙を渡す、という内容でした。

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ACT SAIKYOが創設されたのは2010年4月。

「山口をバドミントン王国に!」を合言葉に、社会人になったばかりの2人の選手でスタートしました。

それが、この皆川選手と安念さんです。

山口にはそれまで縁のなかった二人。スタートしたころは、チームも環境も発展途上。

仕事は早めに切り上げ、あくまで競技が主な仕事の強豪チームと違い、

社会人として定時まで仕事をこなし、そこから夜に練習。

練習が終われば家に帰って自炊、そして翌日はまた仕事。

専用練習場はなく、使えるコートは市民体育館の2面のみ。

「1年目はほとんどシャトルを打った記憶がないくらいバタバタだった」と皆川選手は話します。

 

そんな中で二人は、お互いに励まし、高め合いながら戦ってきました。

「山口をバドミントン王国にする」

「山口の子供たちに、日本最高峰のリーグを見せたい」

その思いを持って。

 

少しずつ、少しずつ、チームの形が整って

少しずつ、少しずつ、仲間と応援してくれる人が増えて

 

そして去年。日本リーグ2部で優勝。

そのシーズン限りで引退を表明した安念選手が

現役ラストゲームの入れ替え戦に勝利し、一部昇格。

選手やスタッフ、観客席が喜びに包まれる中、

涙を流しながら抱き合っていた創設メンバーの二人には、

また違った思いがあったのかもしれません。

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そして今シーズン。初めての一部リーグ。

五輪など、世界を舞台に戦う選手たちが集まった、国内最高峰リーグでの戦い。

格上ばかりの中、1部残留を決めた仲間たちを頼もしそうに見つめながら、

皆川選手も現役生活を終えました。

 

皆川選手の手紙に書かれていたのは、

「さち(安念さん)と一緒だったから、ここまで来られた」という言葉。

手紙を受け取った安念さんも、

「ゆいさん(皆川選手)がいたから、今のチームがある」と、涙ながらに語ってくれました。

そして、2人してこう言います。

「今の私たちがあるのは山口の皆さんのおかげ。本当に山口が大好きになった」と。

 

縁もゆかりもない山口という場所で社会人としての一歩をスタートさせ、

その山口をバドミントン王国にしようと、ゼロからチームを作り上げてきた二人。

チームは、創設から「わずか5年」で日本最高峰の舞台へ駆け上がりました。

その「わずか5年」の間に、どれだけの苦労と、挫折と、努力があったのか。

彼女たちはその大変さを話すことはありません。

ただ一言、

「お互いの存在と、山口の皆さんに助けてもらえたからここまで来られた」と笑顔で話すだけです。

 

ACT SAIKYOは新たな戦力を迎え、これからもっともっと強くなっていきます。

「山口をバドミントン王国に」するために。

いずれ、日本最高峰のリーグが、山口で開催される日が来ます。

それは、山口でバドミントンをプレーする子供たちにとって大きな財産となるでしょう。

そのプレーをみた山口の子供たちが、やがて日の丸をつけて…

そんな未来だって、夢ではありません。

 

「これからは、ACT SAIKYOの、一番の応援団になります」

静かに、しかし笑顔でコートを去った二人がいたことを、

私は、いち山口県民としてずっと忘れないでいようと思います。

 

ありがとう。おつかれさま。

新たな道に、幸多からんことを!

 

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(左が皆川選手、右が安念さん)