楢﨑 瑞の日記
ウイニングボールで伝える思い
下関国際、県勢6年ぶりの夏2勝!
スタンドは大歓声、そして涙、涙でした。
というわけで、いま私は初めての甲子園取材に来ています。
(写真が無くてすみません…)
入社以来、
「あれ?楢﨑って甲子園取材行ったことなかったっけ?」とみんなから忘れられ続けて5年…
ようやく取材に来られました(笑)
下関国際の2回戦の相手は岡山県の創志学園。
最速150キロの直球とスライダーを武器に、1回戦で16奪三振を奪った2年生エース・西くん擁する強豪です。
「今のチームになってから、2回くらい練習試合で対戦があるけど、一度も勝っていないので…」
試合前日、そう話したキャプテンの濵松くん、ただ表情は明るく、こうも言ってくれました。
「監督さんと2年半やってきたことを出せれば、勝てると思っています」
【監督さん】とは、下関国際・坂原監督のこと。
濵松選手はじめ、選手たちが絶大な信頼を寄せる監督です。
先日のニュースをご覧になった方は、記憶にあるかもしれませんが…
1回戦勝利のあと、キャプテンの濵松くんがウイニングボールを坂原監督に渡すシーンがありました。
甲子園初勝利の記念すべきボール。
濵松くんは、
「監督さんへの恩返しは、甲子園で勝つこと。その証がウイニングボールです」
「それを渡すのは全員の目標でもあったので…嬉しかったです」
…と話してくれました。
「じゃあ2回戦に勝ったら、ウイニングボールは誰に渡すのかな?」と聞くと、
「次も監督さんです!」と即答。
え、次も?と私が驚くと、
「感謝の気持ちを表すには1個じゃ全然足りないです!もっと渡さないと!」と笑顔。
厳しい練習で知られる下関国際ですが、
「点差、ランナーの有無、投手や打者の状況、1球1球どういう守備をするべきか、どういう攻撃をするのか?どう動くか?」
「そういう事を、実戦練習で徹底的に教えてくれます。日々みんなで野球を勉強しているというか」
厳しいというより、いろんな場面、状況に応じた動きを全員で共有することに時間を割くので、必然的に長くなる。
その中で、野球だけではなくて「人としてどうあるべきか」も教えてくれる。
「それに、監督さんは、試合に出ていても出ていなくても絶対に選手を見捨てない。だから尊敬しています」
新チーム結成以降、濵松くんに話を聞くたびに、そう話してくれます。
濵松くんも、他の選手も、同じ気持ちだったようです。
2回戦当日。
私はアルプススタンドで取材をしていましたが、たくさんのOBが応援に来ていました。
彼らもまた、こう話します。
「とにかく監督さんに甲子園でひとつでも勝利をプレゼントしてほしい」と。
試合の結果はすでにニュースで流れた通り、
9回の劇的な逆転で勝利。
相手の西投手にとにかく1球でも多く投げさせ、
終盤勝負に持ち込んだ「待球作戦」が、9回の逆転を呼びました。
「最初から、【終盤勝負だぞ】と全員に話していました。リードされて焦りもあったと思うが、信じて耐え抜いてくれた彼らの勝利です」
試合後の坂原監督の言葉からも、お互いの信頼関係が伝わってきます。
「濵松くん、もっといっぱい監督にウイニングボールを渡したいって言ってましたよ」と伝えると…
「彼にはキャプテンとして苦労をかけてきたし、私も厳しく指導してきました。そういう選手が甲子園で活躍してくれて、ウイニングボールを渡したいと思ってくれる。指導者としてこんな幸せはありません」と、笑顔。
「でもね」と続けて、
「9回の逆転直後、打席に立った濵松が感極まって泣いてまして…【前見えてないな、あれは】と思って送りバントのサイン出すのをやめました」と苦笑い。
「嬉しくても悔しくても、そういうところがあるんですよ、彼。いい男ですよ」
「もっともっと、一緒に進んでいきたいですね」
その「いい男」に、「2個めのウイニングボール、渡せたね」と言うと、
笑顔で、はっきりと言ってくれました。
「まだ足りないです!」
感謝を伝える夏は、まだ続いていきます。