八谷 英樹の日記
理屈っぽい話
子どもの頃から「理屈っぽい」と言われていました。
「あなたは また屁理屈ばかり言って!」
そんなことをよく言われる子どもでした。
・・・大人になっても変わりません(笑)。
この仕事をしていると、
普通の人が「どうでもいい」と思うようなことで悩みます。
たとえば 日本語のアクセント。
なんとなくニュースを読んでいるように思われるかもしれませんが、
実は、いろいろと細かく(理屈っぽく)考えています。
「面倒くさい人間だなぁ」と自分でも思います(笑)。
今回は、そんなちょっとマニアックなお話です。
日本語アクセントに興味がない方は、読むのをストップしてください!
ちっともおもしろくありませんから(笑)。
「当時 歩道に人はおらず
運転手の男性は胸を打つ軽傷です。」
先日、ニュースで読んだ原稿です。
アナウンサーになって10年ちょっと経ちますが、
ずっと気になっていたことがあります。
それは「おらず」のアクセント。
どういうことかというと、
①「お」のあとに下がる(「お\らず」と表記。頭高といいます)
②「ら」のあとに下がる(「おら\ず」と表記。中高といいます)
①と②、果たしてどちらが正解なのか。
結論から言うと、僕は②が正しいと考えているのですが、
①で読んでいる同業者も、驚くほどたくさんいます。驚くほど。
言葉の成り立ちを見ると、
「おらず」は、ラ行五段活用「おる(居る)」+打消しの助動詞「ず」。
アクセントを考えます。
まず、「おる(居る)」のアクセントは「お\る」(頭高)。
「おる(居る)」と同様に
「2拍(2文字)で頭高アクセントの五段活用動詞」を見ていくと、
「書\く」「取\る」「降\る」「勝\つ」「読\む」など(他にもたくさん!)。
これらは、打消しの「ず」をつけると、
「書か\ず」「取ら\ず」「降ら\ず」「勝た\ず」「読ま\ず」となり、
いずれもアクセントが1拍後ろにズレる傾向にあるのです。
したがって、「お\る」+「ず」=「おら\ず」
と読むべきではないか、というのが僕の考えです(結論)。
では、なぜ「お\らず」と頭高で読む人が多いのか。
僕の個人的な見解ですが、
おそらく「おる(居る)」という動詞が文語的だからではないか、と。
古典の授業で習った記憶がある方もいらっしゃるかもしれませんが、
「あり」「をり」「はべり」「いまそかり」(ラ行変格活用動詞)の「をり」との混同です。
打消しの助動詞「~ず」も古文チックですよね。
ラ行変格動詞「あり」を用いて「心ここにあらず」という表現がありますが、
あれは「あ\らず」と読みます(「あ\らず」はアクセント辞典に載っています)。
同様に、「をらず」も古文チックに読めば、
「を\らず」と頭高でも良さそうな気がしてきます。
現代文のなかに、ふと古文チックな表現が出てきたことで
「お\らず」と読んでしまう人がいるのかなぁ・・・なんて考えますが、
実際のところはどうなんでしょうか (^^ゞ
個人的には、
「当時歩道に人はいませんでした。
運転手の男性は胸を打つ軽傷です。」
として、「おらず」という表現を
できるだけ使わなければいいのにって思いますけどね。
長々と書きながらも
断言できるほど結論がはっきりしておらず、申し訳ないです。
あ、言っているそばから「おらず」って使っちゃいました (>_<)