楢﨑 瑞の日記

なつのおわりに

 

 

その涙を、圧倒的な力に変えて。

 

第101回 全国高等学校野球選手権 山口大会は、

宇部鴻城の7年ぶり2度目の優勝で幕を閉じました。

 

ことしも決勝の実況を担当させていただき、

その歓喜の瞬間を伝えられたことを幸せに思います。

 

常に「甲子園」という夢を目の前にしながら敗れ、

悔しさを抱えて1年を過ごし、また同じ舞台で敗れ…

宇部鴻城の3年連続準優勝という結果は、私たちが想像する以上に悔しく、

そして辛いものだったのだろうと思います。

 

3つ目のアウトとなる送球がファーストミットに収まった瞬間、

積み上がってきた悔しさや涙、思いが爆発したような喜びの輪が…

グラウンド上にいる選手だけでなく、スタンドにいる選手、保護者、

そしてたくさん駆けつけていたOB…喜びと涙が入り交じる様子は、

背負ってきたものの大きさを表すようでした。

 

私はことし、決勝含む、6試合の実況を担当しました。

それは同時に、歓喜の裏にある、敗れていったチームを見続ける6試合でもありました。

 

この夏限りで退任する監督と1試合でも多く…と願ったチーム、

3連覇という大志を、その背中に背負い続けたキャプテン、

かつて父も立った舞台に…と頂点を目指したエース、

そして、負傷したエースを「もう一度マウンドに上げたい」と力投を続けた2年生…

 

敗れ去った球児やチームにも、それぞれの思いや悔しさ、受け継いできたものがあります。

その悔しさや思いを積み重ねて、また次の夏への糧にしていくのでしょう。

それが新たな軌跡となって、この101回の大会につながっている…そんな事を感じました。

だからこそ、時代や世代をこえて、こんなにもたくさんの人を魅了するのだと。

 

そして、その様子を一回戦からテレビの前の皆様にお伝えできることの喜び。

 

そして実況席に座ることの重み…当たり前ですが、

気軽な気持ちで座っていい場所ではない。

2年半の球児たちの努力…その努力を、思いを、2時間ちょっとの放送の中で、

どれだけリスペクトの念を持って伝えられるか。

できるかな、ではなく、やらなければならない。

球児たちのように、全てにおいて全力で。

この席に座る人間は、そうでなくてはならない。

決勝戦が終わって数日ですが、改めてそんな事も感じています。

 

 

宇部鴻城は、これから甲子園という舞台で、

山口すべての球児たちの思いを力に変え、全力で戦ってくれるでしょう。

 

敗れた57チームは、そんな「自分たちの代表」を応援しつつ、

しかし「102回目の夏」に向けて、日々、鍛錬を重ねています。

新たな戦いは、すでに始まっています。

 

それは私たち実況アナウンサーもそうです。

足りなかったところ、できなかったところ、あらゆる面でさらにレベルアップしつつ、

球児たちの夏に、しっかり寄り添えるように…またこの瞬間から鍛錬を重ねて参ります。

 

その涙を、圧倒的な力に変えて。

 

がんばれ、宇部鴻城。

がんばれ、球児たち。

 

来年の夏も、会えますように。