沖田 総平の日記
やっぱり日本語は難しい
①「斜(しゃ・はす)に構える」
②「穿った(うがった)見方をする」
この言葉の意味を聞かれたら、
①素直ではない言動や態度を取る
②ひねくれた見方をする
と答える方が多いのではないでしょうか。
しかし、本来の意味を考えると、
①は「剣道の試合開始前に、相手に対して刃の先を下げ、姿勢を斜めにして身構えること」なので、
「改まった態度を取ること」であり、
②は「雨だれが石を穿つ」という言葉があるように「穿つ=穴をあける・突き通す」という意味なので
「うまく本質を突いた見方」ということになります。
かといって、たとえば一般の方が本質を突いたいいコメントを言った時に、
アナウンサーが「うがった見方ですね」というと、テレビをご覧の方も「???」となりますよね。
よく、そんなジレンマに陥るのです。
またスポーツの実況などで「檄(げき)を飛ばす」という言葉が出てきます。
「ベンチから、監督が選手に檄を飛ばします」なんていう言い回しをよく聞きますが、
本来「檄を飛ばす」は「自らの意見を広め、大衆に同意を求める」という意味で、
「激励の言葉をかける、指示を出す」という意味ではありません。
ただ、多くの人には「檄を飛ばす」でしっかり意味は伝わってしまうのです。
こういった状況はよく「誤用の一般化」と言われます。
でも実は「国語に関する世論調査」をしている文化庁は“誤用”という表現を使っていません。
記者発表でも「本来の意味から派生した使われ方も誤りではない」としています。
それでも「文化庁が誤りではないって言ってるんだから、アナウンサーも使っていいんじゃないの?」
とならないのが難しいところ。
私はその言葉の本来の意味をしっかり理解した上で、
その場の状況によって、違う言葉に言い換えたり、
あえて“誤用”の方を言ったりと、使い分けるようにしています。
言葉は“生き物”。時代に合わせてその姿を変えていくものです。
「正しい日本語を話す」という信念は堅持しつつも、
柔軟性を持って対応していきたいと思います。