楢﨑 瑞の日記
いまそこにあるものを。
多くの実りがありますように。
先日、下関市の住吉神社へ取材に行きました。
多くの地域で田植えが始まるこの時期に、
五穀豊穣を願って行われる神事「御田植祭(おたうえさい)」の取材です。
いまから1800年以上前、神功(じんぐう)皇后が、この地に住吉大神(すみよしのおおかみ)を祀った際、
お供え物の米作りを命じたという故事に由来する神事です。
いまでは初夏を告げるイベントとして、付近の住民の方をはじめ、多くの人に親しまれています。
豊作を祈る舞を奉納し、
田植え歌に合わせて、神饌田(しんせんでん)と呼ばれる「お供え物の米を作る田んぼ」に苗を植えていくのですが、
今年は新型コロナウイルスの影響で、大幅に規模を縮小しての開催となりました。
豊作を祈る舞や、田植えそのものは、毎年地元の中学生たちが参加するのですが、
今年は集まっての練習をすることができず、参加が見送りに。
過去に経験のある高校生が舞を奉納し、田植えはJA職員の方が行いました。
例年行われていた一般公開も無くなり…
「仕方ないことだけど、少し寂しいね」
地元の方なのか、神社にお詣りに来た女性がそんな風に話していました。
普段の生活の中でもそうなのですが、
こうして毎年行われているイベントを通じても「日常」が失われてしまっていることを強く感じます。
それでも。
「こうしてちゃんと行事を続けていくことも大切。少しでも明るい話題になればいいんだけどね」
取材対応して頂いたJA職員の方の言葉です。
できる範囲でいい。
少しずつでも「日常」を取り戻していくこと。
もちろん、細心の注意をはらいながらではありますが、
「いつもあったもの」を続けていくこと。
何か特別なことがなくても、
「当たり前に続けていること」が、今は何より特別なことなのかもしれない。
そんなことを考えました。
コロナウイルスとの戦いという「非日常」に包まれている今だからこそ、
「当たり前のように」そこにあることを大切にしていきましょう。
そして、実りいっぱいの秋を迎えられますように。