楢﨑 瑞の日記

うまいものはうまい。それで良し。

「口の中に入れた時、ふわ~っとした香りが…」

「舌の上でとろけるような…」

「肉のうまみが…魚介のうまみが…」

「クリーミーな…」

 

所謂、食レポでよく聞かれるワードである。

固定され、ズームだけができるように置かれたカメラの前で、

眉間にしわを寄せ、あるいは目を見開き、

眉を上下させて幸せそうな顔を見せ、発するワード…なのだが、

常に思う。「果たして伝わっているのか」と。

 

取材者として、アナウンサーとして、

まず前提として言っておきたいのは、

美味しいものを食べた感想は、ほぼ「本音」ばかりだということ。

人間なので、もちろん味の好みや好き嫌いは当然あれど、

美味しいと思うからこそ「おいしい」と言っているのだし、

美味しさを伝えたいからこそ饒舌に「何がどうおいしいか」を語るのだ。

伝えたいポイントを強調するがあまり、多少わざとらしいと思われることがあっても、「おいしい」ことが嘘なのではない。

 

「おいしい」ということが前提で、

では、「何がどうおいしいか」をどう伝えるか。ここが重要だ。

あるものは食感を、あるものは香りを、あるものは形状を…

「おいしい」という言葉を裏付け、

なおかつその食べ物の特徴やこだわりをとらえたものである必要がある。

 

 

そこで、冒頭のワードである。

 

 

今更だが、私は食レポが得意ではない。

おいしいものをたべた時には「ヤッベ、ウマっ」というアナウンサーらしからぬ言葉しか出てこないし、

そもそもおいしいものを食べて「なにがどう美味しいのか」を事細かに追求するタイプでもない。「うまいもんはうまい」という原理主義を清々しいほどに貫いているのだ。志向、いや思考の停止である。

 

そこで、冒頭のワードである(2回目)

 

 

なぜうまいのか、なにがうまいのか、

食レポの機会があるたびに必死に考える。

 

・「口の中にふわ~とした香りが…」

なんの香りか。

香ばしい・・・どう香ばしいのか。

〇〇のような香り…そもそも万人にとって「同じ」香りなど存在するのか

 

・「舌の上でとろけるような…」

とろけるのか、とろけないのか。とろけるとして、それはアイスクリームが溶けるような感触なのか、それとも何日も煮込んだハンペンを舌の上に乗せたような感触なのか。

 

・「肉のうまみが、魚介のうまみが…」

うまみってなんだ? 果たしてどれだけの人が「共通理解」できているのだろうか

同じように「コクが…」もわかりづらい。野球でいう「球のキレ」「球のノビ」に近い。

 

・「クリーミーな…」

そもそもクリームをたっぷり含んだ様を表す形容動詞を、もともとクリームをたっぷり含んでいる「おケーキ様」や「おシチュー様」に対して使うのは礼を欠いたコメントではないだろうか。

 

考えれば考えるほど「そうじゃないだろう」というワードを多く使っていて、「果たしてこれは伝わっているのだろうか?」という結論に至る。

 

「うまみ」「コク」「クリーミー」…とても便利な言葉であるし、ともすれば私が深く考えすぎなだけで、ほとんどの方々にはしっかりイメージの共有ができているワードなのかもしれない。

「肝心なことは目に見えない」というのは星の王子様の名言ではあるが、その「目に見えない肝心なこと」を言葉や表情で伝えるのが私たちの仕事である。

便利で一般的な言葉にはなるべく頼らず、自分自身の感性を大切に、なおかつ見ている方々にしっかり伝わるような表現を心掛けることに意味があるのではないか。

 

いつも通り前置きが長くなったが、番宣です。

「どき生らいぶ」で放送中の、「至福のランチ」というコーナーの撮影で、

山口市の老舗洋食店に行ってきました。

なんと40年以上、この場所でたくさんの笑顔を生み続けるオムライスを味わってまいりました。

 

2月13日(土)あさ9時30分からの「どき生らいぶ」でお届けします。

 

え?味の感想…?

……

………

…………

 

おいしかったです。ええ。…なにか?