楢﨑 瑞の日記

2月の備忘録

どどん。

とある特集の編集画面です。

撮影してきた素材を繋げ、切り取り、加工し・・・がこの画面一つに全て詰まっています。

 

「アナウンサー」というと、

テレビに出ている仕事というイメージが強いのですが、

正直なところ、私たちの場合は、アナウンサーとしての仕事よりも、

ディレクターとしての仕事の方が多いのです。実は。

(もちろん担当番組によって個人差はありますが)

 

自分で話題を見つけ、取材し、カメラマンと共に撮影、会社に戻ってから一人で編集する…

何を伝えたいのか、何を見せたいのか、そしてその内容に間違いはないか、

もっとわかりやすく見せる方法はないか…常に自問自答しながらの作業です。

 

アナウンサーなので、基本的に自分で作った特集は自分でナレーションをするのですが、

私の場合は「こっちの方が伝わりやすいな」「こっちの方が演出として美しいな」と思えば、

自分が作った特集でも、ほかのアナウンサーや、

時にはアナウンサーではない人にもナレーションをしてもらいます。

 

大切なことは、取材対象の姿を正確にとらえ、

偏りなく、取材対象の思いや多角的な視点からみた現状を伝えること。

すべてはそのためにあります。

 

テロップが出るタイミングも、コンマ何秒にこだわります。

たった15秒を編集するために、何時間も悩むこともあります。

 

映像の世界とは恐ろしいもので、正直なところ、「テキトー」にやろうと思えば、

どこまでも簡単にできてしまいます。

効率を重視してやろうとすれば、それはもうあっさりと編集は終わるのです。

なんとなくBGMをつけて、それらしいナレーションを入れれば、

「それっぽい」形になるのですから。

 

何本も特集を編集していると疲れてしまって、「もういいかなぁ」という気分になることもあります。

「早く終わらせて帰りたいなぁ」と思うこともしばしばです。

 

ただ、そんな時にいつも思うのが、「特集って何だろう?」ということ。

ジャンルによって様々ですが、

基本的には「その人の人生を短い尺で切り取ること」だと思っています。

 

いろんな取り組みや、出来事、あるいは新たにオープンしたお店、スポーツ…

どんなジャンルの特集にも、そこに「人」がいて、「人生」があります。

 

VTRが5分を超える特集は、私たちの感覚では「長い特集」と言われます。

 

 

でも、たかだか5分なのです。

 

 

人生をかけてやっている取り組みや、仕事、あるいは思い出、努力…

 

取材対象者が長い時間を、あるいは悩みに悩んだ決断の積み重ねを、「わずか5分」に切り取る。

 

 

「特集を作る」とは、そういうことなのです。

 

 

編集や取材をしながら、

「疲れたな」とか「早く終わらせたいな」なんて感情が頭をよぎってしまうとき、

いつも自分に言い聞かせています。

 

 

「他人の人生を、知ったような顔で、たった5分に切り取るなんて、なんて傲慢な仕事なんだ」

 

それは、1分間のニュースも、5分間の特集も同じです。

もちろん、どんなディレクターも傲慢に仕事をしているわけではありません。

常に全力を尽くしています。

 

でも、だからこそ、常に言い聞かせなければならない言葉だと思っています。

 

取材対象者の人生をわずかな時間で切り取り、

そして見てくださる方の感情にも何らかの影響を与えるかもしれないからこそ、

真摯に、丁寧に、コンマ1秒にこだわって作る義務があると信じています。

 

もちろん、長い時間をかければいいというものではないですけどね。

 

効率的に、無理のない働き方で、取材対象者にも、見てくださる方にも真摯に向き合える特集を作れるのが、本当に良いディレクターなのだと思います。はるか遠くにある目標ですが…

 

真摯に向き合い、自分が何のために特集を作るのか。

いろんな情報が、いろんなメディアから流れる時代だからこそ、その姿勢だけは忘れずに、

これからもこの仕事に関わっていきたい。流されることなく。

編集画面を見ながら、ふとそんなことを考えた朝です。おはようございます。

きょうも一日、頑張っていきましょう!