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#177 特別展『扇の国、日本』開催中

皆さんは「扇」が日本オリジナルの発明品であることをご存じでしょうか?
もともと宗教の祭祀(さいし)や日常生活で使われていた扇は、最も身近な美術品として
万人が手にするようになり、やがて、器や着物のデザインにも使われるようになりました。
今回は、そんな扇の魅力を紹介する特別展『扇の国、日本』の見どころをご紹介します。

山口市の県立美術館で開催中の『扇の国、日本』。
会場には、現存する本格的な扇の中でも最古のものとされる平安時代の檜扇(ひおうぎ)『彩絵檜扇(さいえひおうぎ)』をはじめ、
屏風(びょうぶ)や掛け軸、陶芸、着物など、会期の前期と後期で一部作品を入れ替えながら、およそ140点が展示されています。
「扇」をテーマにした本格的な展覧会が開催されるのは、全国でもおよそ30年ぶりで
この展覧会は東京と山口の2カ所のみでの開催です。

屏風の扇屋軒先図(おうぎや のきさきず)<大阪市立美術館蔵>は、
室町時代から江戸時代にかけて数多く営業していた扇屋の様子を描いたものです。
絵の中には扇の竹骨を削る男性や、扇紙を折る女性が描かれていますが、
この頃にはすでに扇作りの分業化が進んでいて、扇屋がその最終段階の仕上げを担っていたことがわかります。

北野天神縁起絵扇面貼付屏風<大阪・道明寺天満宮蔵>は、
防府天満宮に祭られていることでもおなじみの、菅原道真公の生涯を描いた扇を貼りつけた屏風(びょうぶ)です。
物語絵をコンパクトに楽しめる扇ですが、このように屏風(びょうぶ)に貼り集めるとダイナミックに鑑賞することもできます。
ぜひストーリーを追いながら、繊細なタッチの絵を一枚一枚鑑賞していただければと思います。

扇面流図(せんめん ながしず)<名古屋城総合事務所蔵>は、
名古屋城にあった将軍専用の湯殿(ゆどの)の襖(ふすま)絵で、国の重要文化財に指定されています。
湯上りのひとときを過ごす空間を飾ったもので、時の将軍、徳川家光もこの絵を愛でたともいわれています。
水の流れに漂う扇が、形を変え、やがて波間に失われていく「扇流し」を描いたこの作品からは、
優雅さと同時に、「はかなさの美」を感じることができます。

特別展『扇の国、日本』は山口市の県立美術館で5月6日まで開催しています。
学芸員によるギャラリートークなども予定しています。
また毎週木曜日には無料の臨時託児所もご用意しています。
ぜひこの展覧会で、日本人が愛した「扇」の美の世界をお楽しみください。