【県民サーチ】カレーもチャーハンも「加熱すれば大丈夫」は間違いだった 夏の食中毒、あなたの常識を覆す”落とし穴”

8月は「食品衛生月間」です。
連日、危険な暑さが続く山口県。
今週、40度に迫る気温を記録した山口市内の街頭で、ある取材班が町の人々に声をかけました。
テーマは「食中毒への備え」。返ってくる答えはどれも自信に満ちていました。
ところが、食品衛生学の専門家に聞くと、その”常識”には思わぬ落とし穴が潜んでいたのです。
夏特有の細菌性食中毒にまつわる2つの誤解と、具体的な対策が紹介します。
「まな板を変えて、お箸も替えてます」—— それでも菌は潜んでいる

山口市内の商店街。
提灯が並ぶ路地を歩く人々に、食中毒対策を聞くと、様々な声が返ってきました。
「まな板を肉と野菜で変えてますね。焼肉のときはお箸も替えたりとか」
「クーラーのない部屋には食べ物を置かない。とりあえず冷蔵庫に入れるようにしています」
いずれも的確な答えのように聞こえます。
ところが、取材班が注目したのは、学校へ手作り弁当を持参するという大学生の言葉でした。
「春先のときに卵焼きを焼いて持ってきたんですけど、
ちゃんと冷やしてなくて、味が変になってたことに気づいて……食べるのはやめたんですけど」
春先でも、すでに気温は高い。卵焼きが傷んでしまっていたといいます。
その反省から、今では保冷剤2個で弁当箱を上下から挟み、
「めっちゃキンキンに冷やして」持参するようになったとのこと。

しかし、「みなさんの常識は、本当に合っているんでしょうか」と取材班は問いかけます。
食品衛生学が専門の山口県立大学・佐々木正大先生に話を聞くと、
この時期の食中毒には「常識を覆す落とし穴」があるというのです。
夏場にピークを迎えるのは「細菌性」食中毒
佐々木先生はまず、食中毒の種類を整理します。
「食中毒には主にウイルス性と細菌性がありますけれども、
この時期に特に注意しなければならないのは、細菌性食中毒になります」
去年のデータでも、細菌性の食中毒は8月にピークを迎えています。
その理由は温度にあります。多くの細菌は20度〜50度で増殖し、
人の体温に近い37度前後で増えるスピードが最も速くなる。
真夏の気温が、まさに菌にとっての‟快適ゾーン”なのです。
「グツグツ煮込めば大丈夫」——常識①は本当か

細菌性食中毒でとくに気をつけたいのが、夏の定番料理である「カレー」です。
煮込み料理に多く発生するのが「ウェルシュ菌」。
残ったカレーをどう扱っているか、町の人に聞くと——
「作りすぎたら冷凍で小分けして、食べるときにレンジでチンして」
「結構怖いんで、5分ぐらいグツグツ煮込んだりしてます」

「しっかり温めれば大丈夫」。そう信じている方がほとんどでしょう。ところが——
「特に重要なポイントとしましては、
100度の加熱でも死滅することができない菌となります」(佐々木先生)
取材班のアナウンサーが思わず聞き返します。
「ってことは、グツグツ煮込んでも消えない?」
「そうですね、消えないですね」
100℃でも死なないウェルシュ菌。では、どうすればいいのか。
対策は「菌を増やさないこと」です。
ウェルシュ菌は10℃以下になると活動が鈍ります。だからこそ、保冷剤の出番です。

「小分けが終わったものを広げて、
保冷剤の上に置いていただいて、
できるだけ早く温度を下げてあげることが重要です」(佐々木先生)
保存袋や底が浅いタッパーに小分けし、保冷剤の上に広げて素早く冷ます。
触ってみて冷たく感じたら冷蔵庫へ。
熱いまま入れると庫内の温度が上がってしまうため、この「一冷まし」の工程が欠かせません。
「嫌なニオイがなければ大丈夫」——常識②も崩れた
夏休み中の昼食に登場しやすいチャーハンやパスタ。
こうした炭水化物を好んで増殖する菌が「セレウス菌」です。

「一応、最初に匂いを嗅いでみて、大丈夫そうだったらちょっとだけ味見して。
酸っぱかったりしたらすぐ捨てるようにしてます」
そう話す女性に、取材班がこんな問いかけをします。
「チャーハンをうっかり常温で置いてしまった場合、いい香りはします、
見た目も変わっていません。どうしますか」
「チャレンジですね。まずちょっとパクっといってみて……」
“人生経験の勘”で判断しているという声も聞かれました。
しかし佐々木先生はきっぱりと否定します。
「今回ご紹介するような菌は、匂いとか味とかに変化をもたらさない。
ですから、匂いを判定しても、食中毒菌がいるかいないかというのは分からないかと思います」

腐敗菌はニオイやネトつきを引き起こすことがある。
しかし、今回取り上げたウェルシュ菌やセレウス菌は「無味無臭」。
見た目にも香りにも変化が出ないまま、菌は静かに増え続けます。
「じゃあ、もう自己判断できないってことですね」
取材班の言葉に、佐々木先生は静かにうなずきました。
「そういうことです。予防しかないですね」
セレウス菌もウェルシュ菌同様、加熱では死滅しません。
こちらも小分けにして素早く冷まし、冷蔵庫で保管することが基本の対策となります。
エコバッグを洗わず2カ月使うと、菌が「200倍以上」に

スタジオでは、さらに驚きのデータが紹介されました。
普段よく使うエコバッグ。肉や魚から出るドリップ(液体)が付着しやすく、
食中毒菌が増殖しやすいアイテムの一つです。
未使用のエコバッグと、洗わずに2カ月使い続けたエコバッグで菌の数を比べた調査では——
なんと200倍以上に増えていたことが明らかになりました。
「思い出したときに洗濯機に入れることはありますけど……」と話すアナウンサーも、
この数字には驚いた様子でした。
定期的に洗い、しっかり乾かすことが大切です。
食材を切る順番、水洗いの落とし穴

番組ではさらに、日常的な調理の場面でも注意点が示されました。
食材を切る順番は、「野菜や果物 → 魚 → 肉」の順に。
生で食べる可能性の高いものから先に切ることがポイントです。
まな板を食材ごとに使い分けるのが理想ですが、
難しければ野菜を切った後にまな板を裏返して肉を切るだけでも違うとのこと。
また、鶏肉など生の肉をシンクで水洗いするのも避けるべき行為です。
はねた水と一緒に食中毒菌が周囲に飛び散り、包丁や他の食材に付着する危険があります。
気になる場合はキッチンペーパーで拭き取るようにしてください。
「予防しかない」——見えない菌との闘い方
カレーはグツグツ煮込んでも菌は消えない。
チャーハンはニオイが正常でも菌がいる可能性がある。
エコバッグは2カ月洗わないだけで菌が200倍以上に増える。
私たちが「大丈夫」と思っていた判断基準が、次々と覆されていきます。
夏の食中毒対策に”過信”は禁物です。
保冷剤で素早く冷ます、小分けして冷蔵庫へ、エコバッグをこまめに洗う——
いずれもシンプルな行動ですが、それが「予防しかない」菌に対抗する確かな手立てとなります。
熱中症対策と並んで、食中毒対策もしっかりと意識したい季節です。


