のJチャンやまぐち
【県民サーチ】「いつまでも若いと思ってたらいけない」――自宅に潜む転倒リスク、あなたの家は大丈夫ですか
去年1年間で、転倒・転落によって亡くなった人はおよそ1万2000人。
交通死亡事故のおよそ3.6倍にも上る数字です。
65歳以上の転倒は3秒に1人、骨折は1分間に1人以上――。
そう聞いても、「自分には関係ない」と感じる方も多いかもしれません。
でも、その転倒が起きている場所のほとんどは、慣れ親しんだ「自宅」なのです。
9月9日の「救急の日」にあわせ、
Jチャンやまぐちの津山奈穂子リポーターが、
家の中に潜む転倒リスクを体当たりで取材しました。
「つるんと滑って、右手を骨折」――他人事ではない転倒の現実
街で話を聞くと、転倒の経験は決して珍しいことではありませんでした。
「滑る靴下を履いていて、家でつるんと滑って、こけて、右手を骨折しました」
そう語ってくれた60代の女性は、右肩のあたりを手で押さえながら苦笑いを浮かべました。
「段差があるところで、気がつかない間につまずいて……。
いつまでも若いと思ってたらいけないな、と」
国民生活センターによると、75歳以上の家庭内事故で最も多いのが「転倒」です。
「できなくなっていることに気づかない」――高齢者が転びやすい理由

なぜ高齢者は転倒しやすいのか。
山口赤十字病院の理学療法士・竹本幸生さんはこう説明します。
「年齢を重ねるにつれて身体機能は下がっていくんですけど、
やっぱり自分はできるという思いが強い。
できなくなっていることに気づかずに、転倒が起きることが多いです」
思い込みと現実のギャップ——それが転倒の入口になっています。
80歳前後の体を体験してわかったこと
転倒が起きやすい場所は、居間や玄関など「いつもの場所」です。
津山リポーターが試みたのは、80歳前後の体を疑似体験するというもの。
手足に重りをつけ、背中や関節は曲げにくい状態に。
そしてゴーグルは、白内障を想定した視野の狭いものを装着しました。
「かなり視野が狭いですね。すごい、穴の中をのぞいてるみたい」
その状態で室内を歩いてみると、普段は何でもない段差が、一苦労になります。

「いきなりここに段差があるんですね。足を乗り越えるだけでも、意識して一苦労です」
さらに怖いのは、床に無造作に置かれた物です。
「今までの感覚で歩いていて、ここに物があるって全く見えないですね」

床に放置された雑誌やチラシ、コードの配線、
カーペットの端のめくれ——どれも足を引っかける原因になります。

靴下のまま座布団に座ろうとするだけでも、滑って転倒する危険があるといいます。
「急にこの状態になったから違いがわかりますが、
徐々になっていくと、気づかないうちに危険が増えていくということですね」
この言葉に、竹本さんも深くうなずきました。
「ご自宅ですと、慣れ親しんだものが多い。
だから、これは大丈夫かなという判断がつきにくくなったり、
足が引っかかっていることにも気づきにくかったりする方もいらっしゃいます」
「継続しなかったら全くだめ」――街の人たちの転倒予防

では、街の人たちはどんな対策をしているのでしょうか。
80代の男性は、定年してから毎日1時間のウォーキングを欠かさないといいます。
「ずーっと歩くこと、これをモットーに未だにやっておりますからね。
継続、続けなかったら全くだめ。
せっかく積み重なったものが、やめてしまったら元も子もない」
休み休み、自分の体の状態を確かめながら続けること。
それが長続きの秘訣だそうです。

21年間、社交ダンスを続けているという女性は、体幹の大切さを教えてくれました。
「つま先を上げて、かかとから着地することを意識しています」
社交ダンスの先生も、こんなアドバイスをしてくれました。
「姿勢が丸くなると、周りが見えなくなる。
姿勢を正しくすると全体がよく見えますし、足元はそんなに急がない。
ゆったりと、自分を落ち着けと」
転倒が「認知症」につながるメカニズム

転倒の恐ろしさは、骨折だけにとどまりません。
竹本さんによると、転倒は認知症のリスクにもつながるといいます。
転倒を経験すると、転ぶことへの恐怖心から家に引きこもりがちになる方が多くいます。
すると、身体機能はもちろん認知機能も低下してしまい、
それが長く続くと認知症の要因になる可能性があるというのです。
一度の転倒が、その後の生活の質を大きく変えてしまう。
そのことを、私たちはもっと真剣に考える必要があるかもしれません。
今日からできる、自宅の転倒対策

山口赤十字病院の作業療法士・田畑槙一さんが教えてくれた、具体的な対策をまとめました。
玄関の段差には「踏み台」を
ホームセンターなどで売っている低い踏み台を置くだけで、
段差が小さくなり、足が引っかかりにくくなります。
靴を履く際は、ゆっくりと腰を下ろしてから。
立ったままバランスを崩して転倒するケースも少なくありません。
靴下はすべり止め付きを選ぶ
フローリングや畳の上を靴下で歩くと、思いのほか滑りやすいものです。
すべり止め付きの靴下を選ぶか、
スリッパを履くなら、つま先に「遊び」のない、しっかりフィットしたものを選ぶとよいそうです。
廊下・階段にはセンサーライトを
暗い廊下や階段は、転倒リスクが特に高い場所です。
足元を照らすセンサーライトを置くだけで、安全性が大きく変わります。
竹本さんと田端さんは、いずれも「転倒予防指導士」の資格を持つ専門家です。
お二人からのメッセージはシンプルでした。
「改めて家の中の転倒リスクをチェックし、
焦らず、ゆっくり行動することを心がけてください」
慣れ親しんだ自宅だからこそ、気づきにくいリスクが潜んでいます。
まずは今日、自分の家を歩きながら、足元を確かめてみることから始めてみませんか。


