のJチャンやまぐち
やまぐちの底力 農薬からトナーまで 粉砕力で事業拡大
2種類の黄色い粉。
色以外にほとんど違いは見られませんが、実はまったく使い道の粉です。
右側が、カボチャからできた野菜パウダーで、左側はコピー機で使うトナー。
手がけるのは、山口市小郡に本社を置く三笠産業です。
素材も用途も異なるふたつの商品。
製造を可能にした訳を佐伯誠社長に尋ねると「根本にあるのは、粉砕する技術」と語りました。
三笠産業ができたのは、戦後間もない1949年。
農業で使う薬剤や資材を販売してきました。
農薬製造の過程で培った 粉砕技術を軸に、仕事の幅を増やしていきます。
そのひとつがコピーに使うトナーの製造がありました。
自社の工場の製造したトナーのモトは約2mm。
これを持ち前の粉砕技術で、mmの1000分の1の位μ(ミクロン)の大きさまで砕きます。
大きさは7μ。指紋もくっきりするほどの小ささです。
粒の大きさは、取引先によってさまざま。
しかし、機械にはサイズを指定するボタンはありません。
頼りになるのは熟練の感覚。
風量、風圧、回転力などを組み合わせて注文通りの大きさに仕上げます。
小さいだけの粉を作るのは、さほど難しくなく、
「小さい上一定の大きさにする」ということが至難の業ということ。
この技術は国内トップクラスだと言います。
三笠産業は、その技術を野菜不足の人にもと新たな事業に乗り出しました。
作ったのは、野菜パウダーです。
100グラムつくるために使う野菜はおよそ1キロ。
ビタミンや食物繊維などを手軽にとれるといいます。
発売当初こそ知名度はありませんでしたが、今では自然食品業界で一角を担っているそうです。
商品をそこまで押し進めたのは、持ち前の粉砕技術による品質の高さです。
ポイントはパウダーのきめ細かさです。
人の舌に乗った時になめらかな感じがあるっていうのが30ミクロン以下と言われるそうですが、
三笠産業では、さらに厳しい規格を作って製品を作っています。
野菜パウダーの一般的な大きさは300ミクロンから70ミクロン。
これに対し、三笠産業の商品はおよそ20ミクロン。
7μが規定のトナーをつくってきた三笠産業にとって、20ミクロンはそれほど難しくなかったといいます。
圧倒的な細かさに加え、殺菌処理や乾燥処理にも気を配り、
栄養はもちろん野菜そのものの色を損なわないように工夫しました。
農薬づくりから始まった粉砕技術を異なる分野で活用する三笠産業。
大事にしてきた理念を聞くと佐伯社長は、
「思いが原点。何事も思わないと始まらない。全て何かを思うから人は行動に起こす。
やっぱり強い思いを持って『これをしよう』と思うことが全ての始まり。」
と笑顔で語りました。