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やまぐちの底力〜捕鯨の火を守る〜東冷

現在、食卓に登場するクジラの肉は輸入を除くほとんどが調査捕鯨で捕獲したもの。
捕獲したクジラは生態調査を終えると日新丸の船内で食肉加工されます。
その後、下関で陸揚げされ、全国へ。こうして肉は消費されます。

クジラ専門の加工会社「東冷」。会長の石本弘之さんは、博多生まれの82歳。
元々は、建築資材会社のサラリーマンでした。

50歳の時、第2の人生はクジラとともに生きていけるのだったらと脱サラ。クジラの世界に。
東北や関東に赴いて、老舗クジラ加工会社でノウハウを学び、1989年に東冷を設立。
この日、製造していたのは看板商品の「ベーコン」。使用するのは北西太平洋のイワシクジラ。
あらかじめ塩漬けしておいたものを釜に投入。味の決め手は、「ゆで時間」。
特に塩加減は試行錯誤していると。
茹で上がるとカーブを描いた身に。余分な脂が抜けて肉質が引き締まった証拠。
黒い部分を切り取り食紅で表面を彩って薄くスライスすると出来上がりです。

変化する食習慣に合わせて「東冷」は商品展開。
甘辛く煮た「大和煮」は、これまで主流の缶詰から手軽さや食べやすさを考え、
袋詰めや瓶詰の商品も。大和煮以外にもソーセージやカレー。
さらには脂を使ったドレッシングなど商品を生み出す。
「クジラの良いところを知っている人だけでなく、馴染みのない人や知らない人、
苦手な人に親しんでもらえるような取り組みを続けている」と。

しかし、かつては貴重なタンパク源だったクジラも年々、需要が減少。
国民1人あたりの消費量は今では年間わずか40グラム程度。
去年、ブラジルで開催されたIWC=国際捕鯨委員会総会。
日本は商業捕鯨の再開を訴えたが、提案はすべて否決。
年末にはIWCを脱退。日本が表明した商業捕鯨のエリアは排他的経済水域内。
調査捕鯨を行ってきた南極海からは完全撤退し、捕鯨を行う北西太平洋もエリアが激減。
調査捕鯨が始まった頃に誕生した東冷にとって商業捕鯨は初めてのこと。
原料の入荷はこれまで以上の制約が予想されますが、創業者は前向きです。
「逆にクジラの消費が活発になると思う。商業捕鯨に移行することにいろんな人たちが
賛同するのではないか」と。そして「近代商業捕鯨の地として下関は全国に知られている。
どうしてもここから発信していきたい。
魅力ある商品、ここでないとできない商品を提供していきたいという信念がある」とも。
クジラの街の一翼を担う気持ちに迷いはありません。

★東冷
■住所:下関市垢田町5-24-16
■TEL:083-252-8380
https://www.sekitaro.com/