のJチャンやまぐち
やまぐちの底力 司ガーデン
下関市豊北町の山あいにある「司ガーデン」。
およそ1000坪、5棟ある農業用ハウスの中では、白や赤、ピンクなど、
常時40種類以上のバラが育てられています。
年間の出荷本数はおよそ40万本。
県内に15軒ほどあるバラ農家の中でも中堅クラスの規模です。
司ガーデンの代表を務める中司武敏さん。
兼業農家に生まれ、もともと植物を育てるのが好きだった中司さんは、
県立農業大学校を卒業後、神奈川県のバラ園で1年間、住み込みで修業しました。
そして1991年に出身地である豊北町に念願のバラ園をオープンさせますが、いきなり悲劇に襲われます。
オープンして3カ月目、県西部に台風19号が上陸し、農業用ハウスが壊れてしまったのです。
しかしその後は、県内の花の品評会で高い評価を得るなど、
バラ作りを軌道に乗せた中司さんでしたが、花を取り巻く環境の変化が経営を直撃します。
1世帯が年間に購入する切り花の平均価格(総務省調べ)を見ると、
2000年には1万1500円を超えていたものが、2017年には8700円台に。
わずか15年余りで、25%近く減少しました。
また山口県内の消費者が切り花を購入する頻度(県地域消費者団体連絡協議会調べ)を見ると、
「買わない」「2ヵ月に1回以下」が半数以上を占めています。
花が売れないことに加え、海外から安いバラの花が
輸入されるようになり、バラの値段も下落。
そんな苦境の中で、中司さんが2003年に開発したのが、メッセージローズでした。
女性のネイルアートをヒントに編み出した独自の技術を用いて、
1本ずつ手作業で、花びらに直接、文字を入れていきます。
もちろん、文字を入れることで花びらが変色したり、花の寿命を短くするようなことはありません。
インターネットでの販売を強化すると、いわゆるSNS映えすることや、
世界に1本しかない「オンリーワン」の価値が高く評価されるように。
当初は年間9本しか売れなかったものが、今では多い時には月に300本も売れる人気商品となりました。
特にバレンタインの時期は、女性に花を贈る文化が浸透している外国人に人気で、
注文のおよそ8割が外国人男性からだと言います。
こうして県内でも指折りのバラ農家となった中司さんですが、いま最も気がかりなのが地域環境の変化です。
過疎高齢化が進み、労働人口も減少。
国道沿いにも耕作放棄地や休耕田が目立ちます。
地域を元気にして、若者が住み続けたいと思う町にしたい。
そんな思いで目を付け、数年前から栽培を始めたのが、
ハロウィーンの時期によく目にするオレンジ色のかぼちゃです。
しかし、なぜ“かぼちゃ”だったのでしょう?
「ハロウィーン用カボチャというのは、観賞用ということで、日本全国 花業界で取り扱っている。
だからこの需要が伸びてくれば、花業界にとっても花の消費が伸びるということでいいことじゃないかと」
ハロウィーンの時期には、中司さんが実際に小学校などに出向き、ランタン作り教室を開催。
地域の特産としての認知度も上がってきています。
また、ハロウィーンの時期からずれたかぼちゃは、ビールや焼酎として商品化もされています。
最後に、中司さんが大切にしている言葉を書いていただきました。
「私の大事にしたい言葉は『感動の日持ち』です。
花には命というものがありますので、いずれ枯れてしまうのですが、
もらった時の感動はその人にとって一生の宝物になるように感動の日持ちがする花を
これからも作っていきたいと思います」